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くま川鉄道の「田園シンフォニー」は幸福の調べ♪ ベートーベンと駅弁を味わう旅はいかが?

 2016/08/25 乗りテツ最前線 九州(南部)
この記事は約 11 分で読めます。 2,185 Views

熊本県南部の人吉盆地を走るローカル線・くま川鉄道に2015年に登場した観光列車「田園シンフォニー」に一家総出で乗ってきました。素敵な夏の思い出をレポートします。

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出発まで

「田園シンフォニー」ってどんな列車?

田園シンフォニーは、JR九州の観光列車「ゆふいんの森」や「ななつ星in九州」などで有名な水戸岡鋭治さんがデザインした、木のぬくもりあふれるモダンな列車です。車両は全部で5両あり、車両ごとに季節を表す「春」「夏」「秋」「冬」と「白」(白秋)というテーマが与えられています。通常はこのうちの2~3両編成で運行されることが多いようです。

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くま川鉄道沿線に広がる風景は、ベートーベンの有名な交響曲(シンフォニー)第6番「田園」の世界そのもの。運行中はBGMとして「田園」が絶え間なく流れているのですが、下の写真を見てもらえばわかる通り、音にもしっかりこだわっています。

「白」に設置されていた本格的なスピーカー

「白」に設置されていた本格的なスピーカー

運行区間はJR肥薩線・人吉駅に隣接する人吉温泉駅から湯前(ゆのまえ)駅までのくま川鉄道全線で、およそ1時間かけて走ります。運行日は原則として金、土、日、月曜と祝日で、全車指定席となっています。

車内で食事が提供されるグルメ列車ではありませんが、途中駅でおもてなしがあったり、ビューポイントでは徐行運転で景色をゆっくり楽しめるなど、観光列車らしい特典が用意されています。

それでいて、料金は通常運賃プラス座席指定料300円だけ(人吉温泉駅から湯前駅までの運賃は大人690円、小人350円です)。乗り終えた感想として、「本当にこの値段でいいの?」と思うくらいのバーゲンプライスです。

田園シンフォニーの指定席を電話で予約

「そうだ!田園シンフォニー、乗ろう。」と思ったらネット予約はできないので、電話で予約しなければなりません。いまどきアナログだなあと思いつつ、乗車数日前にくま川鉄道に電話を掛けてみました。

担当者につないでもらって候補日をいくつか出して相談したら、「この日は団体さんが入っているので、団体さんが入っていない次の日がいいかも。」なんてことを教えてくれました。

それなら団体客がいない日がいいかな、ということで「山の日」の翌日の8月12日・金曜日に大人5名、子供2名で予約をしました。チケットの購入は乗車当日でいいとのことで、発車10分前までにくま鉄ゲストハウスに来るように説明がありました。

電話のやりとりから、早くも「おもてなし」の心遣いが感じ取れました。アナログのやりとりがむしろ新鮮です。

人吉といえば駅弁は外せない

田園シンフォニーの始発駅、人吉(くま川鉄道の駅名は人吉温泉駅)は駅弁でも有名ですね。

TBS系のバラエティー番組「マツコの知らない世界」の2015年8月4日放送「駅弁の世界」に、人吉駅で駅弁の立ち売りをされている菖蒲豊實(しょうぶとよみ)さんが登場したこともあって、一般にも認知されるようになりました。

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「人吉駅弁やまぐち」の店舗前にある自動販売機には菖蒲さんのお写真が。実はこの方、人吉駅弁やまぐちの社長でいらっしゃるのですね。

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田園シンフォニーの運行ダイヤは、人吉温泉駅11時11分発→湯前駅12時05分着なのでちょうどお昼どきになります。これはもう駅弁を買うしかないでしょう!

残念ながら、くま川鉄道のホームや列車内では駅弁の販売がないので、あらかじめ駅前の店舗で買うことにします。お店に入るとたくさんの種類の駅弁が並んでいて、名物の「栗めし」の他にも「鮎寿司」「かしわめし」など、どれもおいしそう! 大いに迷います。

いわゆる駅弁ではない普通のお弁当やサンドイッチもたくさんの種類があって、おねだんも安かったりします。駅弁の肩書きにこだわらなければこちらのほうがおトクです。

で、結局なにを買ったのかというと・・・ それはのちほど。

人吉温泉駅のホームに「田園」が鳴り響く

くま鉄ゲストハウス

JR人吉駅の駅舎と人吉駅弁やまぐちの大きな建物のあいだに挟まれるようにして、「くま鉄ゲストハウス・くまたび」があります。ここでチケットを購入してホームへ向かいます。

跨線橋を渡って、真夏の日差しが照り付ける人吉温泉駅のホームに降りる前から、ベートーベンの交響曲「田園」の調べが聴こえてきました。耳なじみのある第一楽章の旋律が心地よく響きます。

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車庫から出庫してきた2両編成の列車がゆっくりとホームに入線してきました。今日は湯前方に鮮やかなブルーの車体の「夏」、人吉温泉方に「白」の2両編成です。私たちの指定席は「夏」車両でした。

扉が開くとさっそく中へ。冷房の効いた車内がなによりうれしい。美しい木の内装が清涼感を増します。

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ホームには私たち家族以外の乗客がまばらだったので、今日はガラガラなのかな?と思ったのですが、発車が近づくにつれて車内はにぎやかになってきました。

発車を待ちきれずに「いただきま~す!」(笑)

列車はもうすぐ発車ですが、子供たちはお弁当が待ち切れない様子。もちろん私も(笑)。

ということでさっそく弁当の包みを開けます。

さきほど迷いに迷って買ったのは定番の「栗めし」。迷ったときは基本に帰るのが一番かなと。その判断は正解でした。

人吉駅弁やまぐちの栗めし

人吉駅弁やまぐちの栗めし

お味はさすが「横綱の貫禄」を感じさせるもので、シンプルでありながらしっかりと滋味のある炊き込みご飯と食べごたえのある大粒の栗。冷めていても「まいう~」(死語?)でした。

山彦かしわめし

くまモンの容器がかわいい「山彦かしわめし」

ちなみに子供には「山彦かしわめし」を買いました。くまモンの容器にひかれて選んだのですが、中身はこれまた絶品。分け合いっこして味見したのですが、人吉駅弁のレベルの高さを思い知らされました。

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田園シンフォニーの旅路

普通列車でもある田園シンフォニー

定刻に発車したこの列車は、全車指定席であるものの普通列車として各駅に停車していきます。

実はこの列車。観光列車として運行されないときは普通列車(全車自由席)として運行しています。つまり、「おもてなし」はありませんが、通常運賃だけで田園シンフォニーの車両に乗ることができるのです。

最初のかわいいおもてなし

いよいよ出発。人吉温泉駅のホーム上で職員のみなさんが手を振ってお見送り。車内の私たちも大きく手を振って応えます。

発車してまもなくアテンダントさんがウェルカムキャンディーを配ってくれました。キャンディー好きの子供たちは大喜び!

ウェルカムキャンディー

ウェルカムキャンディーで最初のおもてなし

色紙で手包みしているのが味があっていい感じです。

無人駅での盛大なおもてなしに感激!

2つ目の停車駅、川村駅はひさし付きのベンチがあるだけのただの無人駅、のはずですが、ホーム上には大勢の人の姿が!今日はこの駅で「おもてなし隊」が待ち構えていたのです。

ホーム上は時ならぬ大混雑

ホーム上は時ならぬ大混雑

人吉名産の緑茶が振る舞われます。よく冷えた濃いお茶で、頭がシャキッとします。提供は、この近くで製茶業をしている「お茶のおおば(緑茶園)」さんだそうです。

小さなひさしの下には即席のお店が開店してました。そこには名誉駅長さんの姿も。

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川村駅長

制帽姿が凛々しい川村駅長

停車時間は2分ほどだったでしょうか。写真を撮っているあいだに発車を告げる鐘が打ち鳴らされました。もう少し時間があれば、記念に何か買えたかもしれないのになあ。それがちょっと心残りでした。

日本三大急流・球磨川を愛でる

川村駅を出てしばらくすると、見どころのひとつである球磨川第4橋梁を渡ります。球磨川の流れをじっくり眺められるように列車は徐行運転です。

球磨川第4橋梁を渡る

球磨川第4橋梁を渡る

日本三大急流の一つに数えられる球磨川ですが、この辺りは川幅が広くて流れも比較的ゆるやかに見えます。

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キラキラと輝く水面(みなも)。川の中にはアユ釣りでしょうか。長い竿を抱えた釣り人の姿が何人も見えます。私は釣りの趣味はありませんが、こういう光景を見ると、きっと楽しいんだろうなあと憧れます。

鉄橋を渡り終えると、いよいよ田園風景が車窓いっぱいに広がりました。

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おかどめ幸福駅で幸せの鈴を鳴らそう!

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北海道にあった国鉄広尾線・幸福駅が廃止されたのは1987年のことですから、もう30年にもなります。それでも幸福駅は今なお観光地としてにぎわっています。「たかが駅名」ですが、人を引き寄せる強い力があるんですね。

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現役の駅で「幸福」と付くのはここ「おかどめ幸福駅」だけだそうです。駅名の由来ですが、近くにある「岡留熊野座神社」が「幸福神社」と呼ばれているからとのこと。

この駅も無人駅なのですが、駅舎の入口に「幸福祈願鈴」があって、格好の記念撮影スポットになっています。ということで田園シンフォニーも少し長めに3分ほど停車します。

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おかどめ幸福駅を発車後、「あれ、そういえば記念切符とか売ってなかったなあ。」と思っていたら、アテンダントさんから車内販売のアナウンスが。かわいらしいハート形の台紙にセットされたきっぷと、やっぱりここでも登場の、くまモン台紙の2種類があったので両方購入しました。あさぎりからおかどめ幸福ゆきの190円のきっぷと台紙代込みで各240円です。

広大な田んぼの緑、意外と広い人吉盆地

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車窓にはいつまでも田園風景が続きます。意外にも平地が広くて、鉄路も概ね一直線に延びています。

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ハート形のつり輪

ハート形のつり輪がかわいい。窓の外は一面の緑。

終点・湯前はまんがの里

1時間弱の乗車ののち、終着の湯前駅に到着。観光列車「田園シンフォニー」としての運行はここまでです。

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「荷物は車内に置いといていいですよ。貴重品だけはお持ちくださいね。」と、女性乗務員が声をかけていきます。

それならばと、荷物を抱えて「白」車両へお引越し。「夏」車両とはまた違った内装で雰囲気が変わります。

折り返しの発車まで40分ほど時間があるので、車内に荷物を置いて駅前を散歩することに。といっても子供連れなのでそんなに遠くへはいけないので、駅に隣接する特産品販売所をのぞいてみました。駅弁でお腹いっぱいですが、子供たちのためにアイスクリームを買っちゃいました。

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特産品販売所と同じ並びにある「湯前まんが図書館」には、コミック本がずらりと並んだ本棚と、著名漫画家のサイン色紙がいくつも飾られています。駅のすぐ近くにある「湯前まんが美術館」とともに、湯前から漫画文化の魅力を発信しているそうです。

湯前駅から人吉温泉駅への帰路

折り返し列車で余韻に浸る

湯前駅12時49分発の人吉温泉行きは、往路と同じ車両で折り返し発車しました。帰りのこの列車は観光列車ではなく通常の定期運行の普通列車です。

なので、駅ごとに地元の人たちや下校する高校生たちが乗り込んできます。こんなおしゃれな列車で通学する日常って、素敵ですねー。

ひとけのない川村駅

ひとけのない川村駅

さっき、おもてなし隊や乗客たちでごった返した川村駅も平常の静かな姿を取り戻していました。この駅で乗る客も降りる客もなく、列車のドアが閉じられました。

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13時35分、人吉温泉駅に到着。往復2時間半ほどの小さな旅は、幸福感満載のとても贅沢な時間でした。

この旅のまとめ

くま川鉄道の観光列車「田園シンフォニー」は、水戸岡鋭治さんデザインのおしゃれな列車で様々なおもてなしがありながら、とてもリーズナブルなお値段で利用することができる大変おトクな列車です。今回の私たちのように小さな子供連れでも安心して楽しむことができます。片道1時間弱なので、飽きることのない適度な距離感なのも良いポイントですね。ベートーベンの交響曲のイメージを体感しに出かけてみませんか。

列車運行情報

くま川鉄道・田園シンフォニー

  • 運行会社: くま川鉄道
  • 運行経路: 人吉温泉~湯前
  • 所要時間/運賃: 約54分/990円(人吉温泉~湯前・片道運賃690円+座席指定料300円)。一日乗車券とセットなら往復1,500円です。
  • 運行日・本数: 毎週金、土、日、月、祝日 各日1便(人吉温泉発・湯前行き)のみ運行
  • 参考リンク: くま川鉄道株式会社

今回の利用情報

  • 乗車日:2016年8月12日(金曜日)
  • 乗車経路:人吉温泉 11:11発-(田園シンフォニー)→湯前 12:05/12:49-(普通列車 12D)→人吉温泉 13:35

 

(取材日:2016年8月12日)

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ライター紹介 ライター一覧

mizochi

mizochi

1971年1月生まれ、大阪府在住の鉄ちゃんです。少ない休日に一つでも多くの鉄道路線に乗る方法として、いわゆる盲腸線(行き止まりの路線)の終点からバスや船を利用して他の路線につなぐ「抜け道探し」に夢中になり、いつしか「抜け道探し」とその踏破が旅の主目的に。
1999年にウェブサイト『終着駅のない旅』を開設。2004年にJR全線完全乗車達成。現在はJR以外の鉄道全線完乗を目指して活動中。2016年からJR全線乗りつぶし・2周目を開始。

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